GRV In the groove

Book List 本を紹介します

宇宙が始まる前には何があったのか?

宇宙が始まる前には何があったのか?

ローレンス クラウス (著)

この”Booklist”は本の紹介ページだが、これまで出来るだけネガティブな内容に為らないように気を付けてきた。だが、目立つ本ほど内容には過激な部分や容易に同意できない内容があり、それらに対して距離を取って大人の態度をとることは容易いことではなかった。 場合によっては、自分自身思いもしない言葉で取り繕うことだってあった。結果、何を言っているのか分からない文章となる。 こんな小さなサイトの書評欄が大げさに“ニュートラル”を気取るなんて、バカみたいじゃないだろうか。そういう訳で、今回から結果が否定的になろうが、構わず“読んだ私の気持ち”を書く事にします。出だしから、すみません。

本書「宇宙が始まる前には何があったのか?」は、アリゾナ州立大学の宇宙物理学者ローレンス クラウスによる、無から有が生まれる宇宙論を正面から語った全米ベストセラー。
全体に著者の気合が相当に入った本で、あとがきでは何とダーウィンの「種の起源」にも匹敵すると友人であるドーキンスに書かせている。意気込みは伝わったが、どれだけ偉大な内容かこの本だけでは判断がつかない。ネットで調べるだけでなく、結局似たタイトルの本を数冊よむ羽目になってしまった。つまり相当に時間を使ってしまった。こうなると内容がどうであれBooklistに追加するしかない。
類書をリサーチした結果を踏まえ、本書の内容が「種の起源」にも匹敵するかといえば、答えはNoだ。なにしろ相手は100年に一度の名著、さすがに無理があるし、「種の起源」のように新しい仮説・理論の提示があるわけでもない。
本書の構成はむしろ、読者を飽きさせないやめに理論より、理論が生まれた研究者たちのエピソードを軸に話を進めていく。こうして本書は100年前に生まれた相対性理論から直近のひも理論までの宇宙論(=科学者の考える宇宙の起源と終末)を辿っていく。
ただし残念ながら、日本語タイトルにある「宇宙が始まる前」に費やされた紙面は少ない。たったの3ページだ。(p239~242)しかも「量子重力では真空からインフレーション宇宙が生まれる(byアレックス・ビレンキン)」と結論が書いてあるだけで、その具体的な説明がない!

これでは欲求不満にならない方が不思議だ。
仕方がないので類書を読み、ネットで論文を探して見つけたのが宇宙誕生の図(アレックス・ビレンキン)だ。英文論文
宇宙誕生の図
図の横軸は宇宙の半径、縦軸はエネルギー、a0が宇宙誕生の瞬間―だそうです。少し説明すると、何もない空間の量子揺らぎからトンネル効果で宇宙が誕生する過程を表してる―そうです。(この図は本書に記載されていません、念のため)
素直にこの図で説明してくれれば、余計な時間をかける必要はなかったけれど、現代最新の物理学での宇宙以前モデルというのは、この図の左側部分だけだという事は良くわかった。ただし、念押しておくがこれは量子物理学の数式から導出されたモデルであって検証された完成理論ではなく、数学的にも未だ様々な批判があるとの事だ。

それでは本書の目的は何だろう?過去100年の宇宙創生モデルを読者に理解してもらう事だけではなかった。本書の副題は「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか」、これはカントやハイデガーなどが17世紀から議論してきた西洋哲学の有名な文言。物理学の宇宙モデル成果は、その限られた世界にとどまらず、哲学や宗教の分野へも大きな影響を与えていると著者は序章からずっと主張する。 そして最後の章においては、哲学や宗教界に対して次のように啖呵を切っている。 いわく「哲学や神学は、われわれの存在に関わる根本的な謎に単独で立ち向かうことができない」。(p253)

どうです、ここまで挑発されたことがありますか? 哲学や神学がご専門の皆さん。同じくらい好き勝手に、信じるものを語りませんか?
-- 2016/7/11作成 --




前へ 1 2 3 4 5 6 次へ